「コーヒー焙煎技術の共通認識」 (『コーヒー文化研究第5号』 1998年掲載)

JCS焙煎抽出委員長  田口 護

 

はじめに

 単にコーヒーを煎ることが焙煎技術ではない。コーヒーは嗜好品といわれるが、その前に食品である。筆者は、人が口にする食品を作ることを目的として焙煎技術と捉える。そのために「よいコーヒー」をつくることを出発点に焙煎技術を考えたい。
 コーヒーの味について論議するとき、その味の再現性は最低必要な条件である。「よいコーヒー」という認識は焙煎技術上の味の再現性を高めるものである。

 

目 次
1-1 「よいコーヒー」とは何か
1-2-1 欠点豆がハンドピックによって取り除かれているもの
1-2-2 煎りむらや芯残りのない適正な焙煎が施されているもの
1-2-3 焙煎したての新鮮なもの
2-1 味の再現性
2-2 コーヒーをつくる過程
2-3 焙煎度合と味の変化
2-4 「おいしいコーヒー」を作ることはできない
2-5 味覚を育てる
3-1 「よいコーヒー」は誰でもつくれる
3-2 手網を使ったホームローストの方法
4-1 「よいコーヒー」を前提にした焙煎の実務的問題点

 

 

1-1 「よいコーヒー」とは何か

 「よいコーヒー」とは、以下の3点を満たしているものをさす。この3点が満たされずして技術を云々するのは論外である。
 1-2-1 欠点豆がハンドピックによって取り除かれているもの。
 1-2-2 煎りむらや芯残りのない適正な焙煎が施されているもの。
 1-2-3 焙煎したての新鮮なもの。

以上の3条件を順に解説する。


1-2-1 欠点豆がハンドピックによって取り除かれているもの

 コーヒーは生産国から輸入された時点では、食品としての精製度が不足している。ゆえに欠点豆を手で一粒一粒取り除く。この作業をハンドピックと称する。 代表的欠点豆には以下のものがある。

(ア)死豆
(イ)貝殻豆
(ウ)パーチメント
(エ)醗酵豆
(オ)ブラックビーン
(カ)虫食い豆
(キ)未成熟豆
(ク)異物(石、木片、他の穀物)

ハンドピックで取り除かれた欠陥豆や異物

 たとえばブラジル生豆のグレード判定には、300グラムのサンプル中の欠点豆を調べ、欠点の重要度に応じて点数化、もっとも点のよいものに「No.2」のグレードをあてている。これは、生産国において欠点なしの「No.1」がほぼ存在しないことを意味している。

ヨーロッパのコーヒー消費国では輸入後、選別機などの機械によって製精度をあげる工程をへて焙煎されるのが標準といえる。欠点豆とその除去については、米、大豆などの農産物と同じように考え扱うことが大切である。いわゆるグレード判定の場合の品質と、実際に口に入れるときの品質はちがう。どちらの段階の品質を試料の出自とするかで同じ焙煎技術をつかっても結果は異なる。

 ハンドピックしないで焙煎した場合、その味は部分的に欠点豆の影響を受ける可能性がある。同じ生豆を複数回繰り返し焙煎したとき、毎回違う味に仕上がる場合がある。原因は欠点豆ではないかもしれないが、欠点豆をハンドピックによって取り除くことで、少なくとも欠点豆が原因で味が変化したのでないことがはっきりする。


1-2-2 煎りむらや芯残りのない適正な焙煎が施されているもの

 煎りむら、芯残りは、焙煎の失敗によってできるコーヒー豆であり、これが一部混入または全部の場合、適正に焙煎したものとはあきらかに味が変わる。煎りむらは様々な焙煎度合の味が混在するのと同じである。芯残りは火のとおりが悪く豆の中心部分が生で残ってしまう状態で全体に味香りがでない。ほかに排気の異常によって本来焙煎機外に排出されるべき揮発成分や煙がこもってしまい煙かぶり、ガスごもりを起こすものがある。芯残り同様にコーヒー特有の味香りは望めない。

 たとえ1-2-1の条件を満たしても、適正焙煎が施されていない限り、焙煎したコーヒー本来の持ち味を引き出したことにはならない。
 適正不適正の判別については、適正に焙煎されたコーヒーを習慣的に飲用することで容易に判別能力は身につく。


1-2-3 焙煎したての新鮮なもの

 コーヒーには脂肪たんぱく質などが含まれている。焙煎されたコーヒーは豆、粉の状態に関わらず酸化する。筆者の経験測からいえば、焙煎後およそ2週間程度であきらかに味が変化する。前記1-2-1-2の条件が満たされない場合は、その経時変化が速まるか大きくなる。焙煎後の保存環境が高温の場合も経時変化は速まる。
 経時変化後の味は、一旦それまでの味香りがなくなり、その後しだいにすえた酸味と臭いが強くなる。なお一旦経時変化してしまったものはその後はほとんど味香りは変化しない。

 ここでは主にアラビカ種を対象に論じているが、それとは別なロブスタ種の場合は焙煎したての段階から味香りはアラビカ種と異なり、独特な苦味と煎り麦臭のような独特なロブ臭をだす。ヨーロッパの消費国では、アラビカ種が高価で味の評価も高い。ロブスタ種はアラビカ種に比べて焙煎後の味香りの経時変化も微弱である。

 

 

2-1 味の再現性

 技術とは安定した再現性を得られなければ意味がない。毎回違う味のコーヒーができるのでは技術とはいえない。もちろん人間の舌が認識不可能な微細な変化は毎回伴う。しかし、正しい焙煎技術のもとでは、人間の舌が認識可能な「同じ味」を繰り返しつくることができる。それをもとに、正しく飲み続けることで、味が変わったことを認識する味覚が磨かれる。

 そのとき、何によって味が変わったか判別するには、不定な要素をできるだけ排除しておく必要がある。例えばハンドピックしないで焙煎した場合、様々な味が混ざり合い、結果「同じ味」の再現性が失われるだけでなく、味が変化した原因も特定しにくい。少なくともハンドピックしたものであれば、いわゆる欠点の味は原因から消去できる。


2-2 コーヒーをつくる過程

 以下はコーヒーを製造する過程であるが、この全ての段階に味が変化する要素は包含されている。
 1)仕入れ
 2)品質管理(生豆在庫)
 3)ハンドピック(生豆)
 4)焙煎
 5)ハンドピック(焙煎豆)
 6)品質管理(焙煎豆在庫)
 7)粉砕
 8)抽出

1)4)6)の各段階で品質チェックのためのカップテストが行なわれる。
 この中で少なくとも3)から5)までの過程が再現性を得るほど安定していれば、それ以外の要素の変化に素早く気づき対応することが可能になる。特に原材料すべてを輸入に頼るコーヒーの場合、仕入れ段階の判断能力は2)以降の各段階の技術を完全にマスターしなければ望めない。

 ここで注意しなければならない。生産者側にとって必要な判断力と日々焙煎し使う側に必要な判断力には相違がある。生産者側にとって、少なくとも焙煎技術上の再現性については情報も少なく、配慮もそれに比例したものとなろう。生産国側にとっては生産総量中に占めるもっとも割合の高い標準グレードの評価基準がどの程度の品質か、その基準の中でいかにコストを抑えつつ生産量を増やすか、に関心の中心がある。したがって同じグレードの生豆といっても年々変化は免れない。とすれば焙煎する側は、焙煎技術の安定と再現性に裏付けられた生豆を見極める判断力が要求される。

 さらに1)の前段階にあたる生産国側の製造過程を知る必要が生じる。生産国の諸状況、品種、栽培、精製、グレーディングは、「コーヒーの味は生豆で決まる」と考えるなら最重要な要素になる。しかし、世界60カ国の生産国すべてが諸々の製造過程が異るため、たとえばブラジルの基準は隣国コロンビアでは通用しない。

 厳密な原材料の出自をより明確にするためには、最低限以下の情報をつかんでおく必要がある。生産国。生産地域とその標高、自然環境。輸出業者名、農園名、商品ブランド名、できれば品種。年度とその年度の作柄状況。精製方法。等級分けの方法とその等級。輸出方法と日本までの行程、所要期間、管理方法。しかし、これらをすべて把握ししかも確証を得るのは困難である。またこれらの情報は、安定した味の再現性を求める焙煎技術上の調節に目安を与える十分条件であっても必要条件ではない。

 

 


2-3 焙煎度合と味の変化

 コーヒーはどの焙煎度合に焙煎するかによって味が変化する。(表1参照)
 焙煎度合の呼称はアメリカ式の8段階の焙煎度合呼称がある。表右方向に筆者が便宜上使用している焙煎度合の呼称、焙煎時間の変化、豆の色の変化、味の変化の原則を示した。焙煎時間の長短によってコーヒー豆の表面の色は変化する。抽出したときの液体の色は、原則的にはその色の変化に対応する。

表1
基本的4段階
8段階
時間
色の変化
味の変化
浅煎り
ライト
短い
明るいベージュ
酸味が強い
シナモン
中煎り
ミディアム
茶色
ハイ
中深煎り
シティ
焦げ茶色
フルシティ
深煎り
フレンチ
黒に近づく
イタリアン
長い
苦味が強い

 コーヒーの味は2-2項でふれたように加工過程の各段階で変化する可能性がある。そのうち輸入されてくる生豆のもつ味は、焙煎して使う側の立場からは変えようがない。したがって焙煎によってもともとない味をつくることはできない。しかし、その生豆のもつ味は焙煎によって引きだしたものから検査評価される。どう焙煎するかで生豆のもつ味の引きだしようが変わってくる。どんなに豊かに味をもっていても焙煎方法によって間違った評価をされることもおきる。

 たとえば、生豆Aはもつ味の総量といった点において群を抜くものがある。しかし、この生豆Aは含水量が多く粒も肉厚で硬く、適正に火をとおすのが難しい種類に属する。これはヨーロッパでは評価が高い。そのことはヨーロッパ式に焙煎しヨーロッパ式に飲んでみれば首肯ける。少なくとも生豆Aに関して浅煎り(ライト、ミディアムロースト程度)では酸味が強調される。もし火のとおりがわるい場合、渋味やエグ味もだすかもしれない。これをもって生豆Aが酸味の強いコーヒーで、渋味やエグ味をだすので評価が低い、と判定される場合もある。

 生産国によって輸入される生豆のもつ味の総量はまちまちだが、その個性を適確に味わい判断するためには「同じ焙煎度合のとき」という条件が必要である。ただし生産国別の味の個性よりも焙煎度合による味の個性の方が人間の舌の認識能力では優先される。
次の(図1)は、筆者の経験値からつくった焙煎による味の変化をモデルにしたものである。

横軸は焙煎度合だが、時間は図を見やすくするため部分的に拡大縮小されている。味が急激に変化する部分は、実際の時間より伸ばして記されている。目安として「フルシティ」から「イタリアン」までの焙煎度合を書き入れた。

図1

実際の焙煎においては、再現性を得るために焙煎記録データをつける。

 焙煎日時、気象条件、焙煎室環境、使用コーヒー、焙煎量、使用目的、目的の焙煎度合、火力設定、焙煎時間、1分毎の焙煎豆温度、1分毎の排気温度、ハゼ時間と温度のチェック、その他の諸作業をチェックし書込み、のちに一覧できる表を作成し毎回記録する。この記録は2年から3年にわたって記録し続け整理すれば、同じ焙煎装置の焙煎データの現象傾向をつかむことができる。この傾向は他の焙煎装置には簡単には適応できない。筆者はデータ採取にあたって、焙煎量の一定化、焙煎諸作業の単純化を勧めている。

なお焙煎装置が新設の場合、2年から3年という期間は、焙煎室などの環境を含む装置全体が安定化する途上にあり、現象傾向をつかむために適切な期間と考えられる。

 

 


2-4 「おいしいコーヒー」を作ることはできない

 「おいしいコーヒー」は、官能的理想像、個人の感情の産物である。
 つまりここでいう「おいしいコーヒー」は焙煎技術の範疇ではない。焙煎技術で達成可能なことは「よいコーヒー」をつくることである。さらに人が口にする食品を作るという目的からすれば、焙煎技術は「よいコーヒー」をつくる手段である。

良いコーヒー
=おいしい
=まずい

悪いコーヒー
≠おいしい
=まずい

 「よいコーヒー」を安定して提供することがプロの技術に最低限要求されるものである。ただし「よいコーヒー」を飲んだすべての人がそのコーヒーを「おいしい」とは感じない。「よいコーヒー」は焙煎度合によって様々な味が構成される。原則として浅煎りならば酸味が強く、深煎りにならば酸味は弱くなり苦味が強調される。そのコーヒーがどの焙煎度合に仕上げられているかで全く違う味のコーヒーになる。「よいコーヒー」の焙煎度合による味の違いは、コーヒーに対して味覚訓練を行っていない人でもかなり容易に認識できる。しかし、一度好き嫌いという個人の好みの基準で計られるならば、それは千差万別ひとりひとりの好みは違う。

 異論もあろうが、私見では日本人の多くが日常生活の中でコーヒーを飲用できるようになったのは、この20年から30年間と考えられる。つまり日本人はコーヒーについての味覚はたいへん歴史が浅いことになる。ヨーロッパでは300年前からコーヒーを飲むカフェが隆盛し豆の販売も行なわれていた。家庭でのコーヒー飲用はかなり市民層にまで普及していた。

 ご飯を例にとるなら、たいへん長い歴史をもつ日本人の多くが、米を炊くときの水加減によってご飯が硬くなったり柔らかくなったりという調節を理解できる。また正しい方法の範囲で極端な調節例はお粥まである。これらが正しく炊かれているかどうかの判断はかなり多くの日本人にとって容易につくだろう。間違った炊飯によってできた「わるいご飯」と、正しく炊飯された「ご飯」の区別は容易につく。そして「よいご飯」をその硬さなどの好き嫌いから「おいしい」と「まずい」に意見が分かれることはあっても、「わるいご飯」を「おいしい」と断ずることは稀だろう。

 これをコーヒーに適用したとき前掲の模式が成立する。つまり「よいコーヒー」ならばその中で「おいしいコーヒー」と「まずいコーヒー」に意見が分かれ得る。「わるいコーヒー」に「おいしいコーヒー」はありえない。または「わるいコーヒー」を「おいしいコーヒー」と評価することは正しくない。

焙煎技術によってできるコーヒー
鮮度
焙煎適正度
ハンドピック
良いコーヒー
おいしい
まずい
悪いコーヒー
おいしい
まずい

*個人の好みの評価だが「悪いコーヒーを「おいしいコーヒー」と評価するのは正しくない


2-5 味覚を育てる

 ここまで論じてきたことは、やはり正しく訓練された味覚が必要である。コーヒーをつくる過程のすべての段階で高度な検査能力を身に付ける必要がある。
 「よいコーヒー」だけを飲み続けることが「よい舌」を作る。たとえば宝石の真贋鑑定の基礎訓練は本物だけを見続けることというのと同じである。もちろん焙煎技術の中では一番時間を要する訓練である。未熟な野菜、冷凍の魚介類、様々な食品添加物、消毒された水道水と現代人は味覚訓練の妨げになる環境条件に慣らされている。まずは味覚訓練の意識をもつことから始めなければならない。

 2-3の(表1)でアメリカ式8段階の焙煎度合を掲げた。これをよりおおまかに4段階(浅煎り、中煎り、中深煎り、深煎り)に分ければ、コーヒーを飲む消費者のかなり多くが特別な味覚訓練なしで味の違いを認識できる。焙煎技術を習得したプロならば、より細分化した味の違いを認識するべく味覚訓練を行うべきである。たとえば8段階をさらに2分割した16段階、3分割した24段階の焙煎度合の違いを認識できる味覚が望ましい。ただし、ここでいう味覚訓練とは、いわゆる酒類の銘柄当てとは違う。

 筆者は日本コーヒー文化学会会誌「コーヒー文化研究」第3号に「珈琲の味の判断の熟達化」と題する共同研究の結果を発表した。コーヒーについて多次元の味覚地図を作れないかという心理学からのアプローチであるが、コーヒーに携わる者が味覚訓練を受け、自分の味覚の成長を確認する意味で教育的価値が包含されていることを示唆した。

 

 


3-1 「よいコーヒー」は誰でもつくれる

 筆者は以前より機会のある毎に、手網(ギンナン煎り)を使ったホームローストを一度は経験するよう提唱してきた。一回150グラム程度の焙煎で、量的には少量のため慣れるまで失敗もあるかもしれない。しかし、「よいコーヒー」を経験してもらえる絶好の機会である。少量であることは、まず欠点豆のハンドピックを楽にする。同時に「煎りむら」を起こしやすく、適正焙煎とそうでない焙煎についての感覚が養える。そして1週間から10日前後で飲みきれる量なので、焙煎したてのコーヒーを常時飲み鮮度に対する味覚を磨くことにもなる。


3-2 手網を使ったホームローストの方法

手網を使ったホームローストの基本になることを以下に掲げておく。

 

 


 準備(1) 道具(1-3は焙煎に4-6は冷却につかう)
 1.手網の豆煎り器(ギンナン煎り)
 2.ダブルクリップ(豆煎る器のふたを止める)
 3.ガスコンロ(熱源は火力の安定したガスコンロがよい)
 4.金ザル(煎る上がったコーヒーを冷却する)
 5.木杓子
 6.ドライヤー(冷風が送れる物)


 準備(2) 材料とその選択
 1.コーヒーの生豆(自家焙煎コーヒー店やデパートのコーヒー売り場等で手に入る)
 2.何から焙煎するか(焙煎しやすい豆は、キューバ・ブラジル・メキシコ・ペルーなど中南米のコーヒー。最初のうちは、同傾向の豆を繰り返し焙煎するとよい)
 3.焙煎量(生豆の計量は、いつも一定にした方が勘をつかみやすい。直径23センチ深さ5センチの手網では、 150-200グラムが適量。それ以上入れると、豆が中で撹拌できなくなり、ひどい煎りむらになってしまう)


 準備(3) ハンドピック

かびの生えた豆、表面が黒くなってる豆、欠けたり割れている豆、貝殻の様になっている豆、他に比べ極端に色の白い豆、コーヒー豆以外の石、他の穀物など。コーヒーも農産物なので、産地の事情でこうした異物が混入するのは避けられない。

 

火加減
 ガスコンロは中火にした状態で、手網と火の間の距離で次の3段階程度を設定する。遠火(約10-15cm)中火(約5cm)近火(約1.2cm)。

焙煎・時間 以下「第一段階-第四段階」の各項を参照(註1あり)
第一段階
(0-8分前後)
コーヒー豆は水分を含んでいて、まずはこの水分を全体的に抜く。水分抜きがうまくできると、コーヒー豆は白っぽくなり薄皮(チャフ)がはがれ始める。
第二段階
(10-15分前後)
コーヒー豆は、だいぶ色付く。ここからが最も大事なところ。手が疲れても休めてはいけない。15分前後で(ものによっては20分)豆が「パチパチ」とはじけ始める。『1ハゼ』
第三段階
(15-20分前後)
1回目のはじけ(1ハゼ)が終わってから、さらに焙煎を続けると2回目のはじけが始まる。『2ハゼ』は、1回目とは違い、今度は「ピチピチ」という音がする。音が止んでくると煙も出てくる。この段階で火に近付けすぎるとむら焼けや、オーバーローストの原因になりやすい。
第四段階
(冷却)
焙煎作業を締めくくるのが、豆を冷やすこと。焙煎がそれ以上先に進行しないように行う。焙煎を終了すると決めたら、即座に火を止めてザルに移してドライヤーで冷風を送り、手で触っても熱くない位まで手早く冷ます。ここで時間を置くと焙煎が進行し、むら焼けの原因になる。保管は、密閉容器に入れて冷暗所に置く。但し、いきなり密閉容器に入れるとガスがこもってしまう。  

(註1) 時間については、火加減を調節することで短時間にも長時間にもできる。基本的な味作りは後述する焙煎度合によるが、同じ焙煎度合に煎られたコーヒーについては、時間の長短によってさらに味の傾向は変化する。味作りについて考える場合、まずは焙煎度合を基本におくことを勧める。

 

焙煎・時間 以下「第一段階-第四段階」の各項を参照(註1あり)
第一段階
(0-8分前後)
コーヒー豆は水分を含んでいて、まずはこの水分を全体的に抜く。水分抜きがうまくできると、コーヒー豆は白っぽくなり薄皮(チャフ)がはがれ始める。
第二段階
(10-15分前後)
コーヒー豆は、だいぶ色付く。ここからが最も大事なところ。手が疲れても休めてはいけない。15分前後で(ものによっては20分)豆が「パチパチ」とはじけ始める。『1ハゼ』
第三段階
(15-20分前後)
1回目のはじけ(1ハゼ)が終わってから、さらに焙煎を続けると2回目のはじけが始まる。『2ハゼ』は、1回目とは違い、今度は「ピチピチ」という音がする。音が止んでくると煙も出てくる。この段階で火に近付けすぎるとむら焼けや、オーバーローストの原因になりやすい。
第四段階
(冷却)
焙煎作業を締めくくるのが、豆を冷やすこと。焙煎がそれ以上先に進行しないように行う。焙煎を終了すると決めたら、即座に火を止めてザルに移してドライヤーで冷風を送り、手で触っても熱くない位まで手早く冷ます。ここで時間を置くと焙煎が進行し、むら焼けの原因になる。保管は、密閉容器に入れて冷暗所に置く。但し、いきなり密閉容器に入れるとガスがこもってしまう。  
(註1) 時間については、火加減を調節することで短時間にも長時間にもできる。基本的な味作りは後述する焙煎度合によるが、同じ焙煎度合に煎られたコーヒーについては、時間の長短によってさらに味の傾向は変化する。味作りについて考える場合、まずは焙煎度合を基本におくことを勧める。

 

好みの味作り 以下「浅煎り-深煎り」各項を参照(註2あり)

浅煎り
一般メーカーのコーヒー豆と同じ位の煎り度合。いわゆる、ミディアムロースト辺りであるが1ハゼの終り位で終了する。
中煎り・中深煎り
2ハゼに入る前位で終了すればハイローストからシティローストほど。2ハゼの最中で終了するとフルシティロースト。ペーパードリップで日常的に楽しむのに良い中庸な味。
深煎り
2ハゼ終了からフレンチロースト、2ハゼが完全に終わってしばらくの後に終了したものが、イタリアンローストとなる。  
(註2) あくまでホームローストの焙煎度合である。厳密な意味での焙煎度合の確定は焙煎機を使用するべきである


4-1 「よいコーヒー」を前提にした焙煎の実務的問題点

 「よいコーヒー」を維持するためには、高度な味覚検査能力が必要だ。
 コーヒーは農産物であるから年毎の生豆の特性は作柄に応じて変化する。また同じ年度、グレード、ロットでも1年間保存する上で含水量の変化は免れない。その上、日本は季節の変化も目紛しい。機械的に同じ作業を反復しても違う結果になる。それに対応した焙煎をするためには、まず基礎的な基準づくりが必要である。

 2-3において味の変化に大きな役割を果たす焙煎度合について述べた。
 同じ目的の焙煎ならば毎回同じ焙煎度合でなければならない。焙煎度合がズレたら味は変化する。再現性の上からも常に同じ焙煎度合に焙煎することが絶対に必要である。まず焙煎度合が確立されて、焙煎度合は同じだが味が変化したのはなぜか、が問題になる。  

比較的多い例をあげる。
 たとえば以前に比べて生豆Bは苦味が強くなったと感じる。調査したが生豆は以前と変わっていない。焙煎装置はメンテナンスが行き届いている。結局、焙煎度合が深い側へズレていたため苦く感じたことがわかる。それは微妙な色ズレを繰り返しているうちに変化したのだが気がつかない。焙煎度合のズレとともに人間の舌で認識しきれない微細な味の変化が起きていたのだが、回を重ねるうちに認識可能な味の差異に達したため、味が変化したことは認識できるのだが、容易に焙煎度合の色ズレには気づかない。それを見抜けないと他に原因を求めることになる。結局原因を生豆に求めたり、焙煎装置に求めたりしてかえって適正焙煎の技術を失ってしまう例も多い。

 同じ焙煎度合を維持するために、前回焙煎した使用コーヒーや使用目的の同じ、しかも正しい焙煎度合のコーヒー豆のサンプルが必要である。サンプルの色あいに正しくあわせることで色による焙煎度合のズレをなくす。これには焙煎中のコーヒー豆の色あいを見極める作業が伴うので当然だがプロは焙煎機を使う。業務用焙煎機は庫内のコーヒー豆を少量取りだすテストスプーンが付属している。スプーンで取りだしたコーヒー豆とサンプルを比較して焙煎度合をあわせる。

 つまり焙煎技術の初期段階において、どの焙煎度合についても適確に同じ焙煎度合の色あいにあわせられる判断力とそれを実行できる技能が必須である。
 焙煎技術の初期段階において、使用するコーヒーの製精度を高めることで繰り返し同じ焙煎度合にあわせる技術の向上の助けになる。あわせて製精度を高めるほど味の微弱な変化に対する認識度が高まる。しかし「よいコーヒー」を前提にしないなら、必然的に味に対する認識は厳密さから遠ざかる。同様「よいコーヒー」を前提にしない技術の再現性もまた厳密さとはかけ離れた調節機能しかもたない。

参考文献
田口護 『コーヒー味わいの「こつ』(柴田書店)1996年
柄沢和雄・田口護 『コーヒー自家焙煎技術講座(柴田書店)1986年
黒沢学・田口護 「珈琲の味の判断の熟達化」コーヒー文化研究第3号所収
バッハコーヒーグループ HOT2 1988年

初出(1997年2月金沢大学市民講座講演テキストとして執筆され、のち「コーヒー文化研究第5号」に収録)